徳地 佑悟/yugo tokuchi

 
バンダイナムコエンターテイメントに入社し、海外営業や開発を経験し、ゲーム機の販路拡大に貢献。海外営業期間で感じた和食チェーンの増加をキッカケに、インドで寿司屋を2軒起業。レストランアワードを受賞する。その後、一身上の都合で日本に帰国しブロックチェーン事業に従事。開発から事業責任者までを担当し、NFTやブロックチェーンという新技術の社会実装を手掛ける。趣味で自動運転機能を楽しむのが好きでTeslaを購入。その体験から自動車業界の時代の変化を感じ、Turingへ。現在は車両戦略・開発チームの責任者として経営陣と開発チームの橋渡しをしている。
 

好奇心と圧倒的コミットで形にしてきたキャリア

ーー入社から法規認証・保安基準の高速インプット、事業戦略の策定、各種アライアンスの推進など事業に影響度の高いイシューを推進されている徳地さん。自動車業界が未経験領域にも関わらず、なぜここまで早くキャッチアップができているのでしょうか?

キャリアの軸は好奇心

 
自分としてはまだまだですが、キャリアにおいて大事にしているのは「その時一番面白いと感じたことにベッドする」というスタンスです。キャリアプランとかは全くないのですが、その時に一番興味があることを仕事にすると、仕事=趣味でとても楽しく毎日が過ごせるなと思っています。
 
ファーストキャリアで海外営業をしていた時に、現地で日本の和食店が増えるのを見てワクワクしたり、ブロックチェーンをプライベートで触っていて金融やサービスのあり方が変わることに心を躍らせたりと、その時自分の心が震える方向へと進んでいました。その結果、寝食忘れて仕事に没頭でき短期間で深いところまでインプット・アウトプットができていたんです。
 
今までの経歴を並べると、海外向けゲーム機、飲食、NFTと全然バラバラなのですが、職務としては、いつも以下の3つをやってきました。
 
  1. 事業を俯瞰で見て計画を立てる
  1. 法律を把握して最短コースで認可を得る
  1. ユーザー体験を設計して商品・サービスを売る
 
特に、法律をハックしつつ事業を進めるみたいなプロセス結構好きなので、保安基準読みながら車の仕様を考えるのはとても楽しいです。

自動車業界は大きく変わる。そう確信したTeslaとの出会い

ーー心が震える方向に進み、仕事=趣味の状態で働くことはいち個人のキャリアにおいても大事な視点だなと思いました。転職のいちセオリーとして今までの経験した業界や職種の延長線上のキャリアを選ぶ人が多いのに対して、なぜ徳地さんは畑違いの業界から、自動車業界へのチャレンジを選んだのでしょうか?
 
EVに乗ったり、自動運転機能を試したりするのが好きでいろんな車に触れていました。ある日Teslaに乗った時にハードやソフトが統合した感覚やオートパイロットという自動運転機能で推論が行われている様子を目の前にした時、自動車業界が大きな転換期にあるなと感じたんです。
 
OTA(Over The Air ※車両のコンポーネントソフトウエアとファームウェアを遠隔で更新する機能)でTeslaをアップデートさせた時に、車体からメカっぽい音がするんですよ。あ、そこまでアップデートされているのかと。ソフトウェアがユーザーを驚かせるレベルでハードウェアに影響範囲を広げているのを感じ、びっくりしました。「スマホ以上の大きな変化が起きるな」と強く思い、ワクワクしていた時にTuringの存在を知り、オンラインイベントに参加して選考へと進みました。

TuringのBiz1人目から自動車開発戦略の責任を担うまで

ーー事業開発一人目として入社されました。入社後はどんなことに取り組まれてきたのでしょうか?

ゲームを理解するための保安基準インプット

入社後に取り組んだのは法規認証・保安基準のインプットです。Turingは自動運転やIVIシステムだけでなく、車両も作ろうとしている会社です。車メーカーになるためには保安基準適合・型式証明を通過することは必須である一方で、社内にそこを熟知した存在はまだいませんでした。
 
保安基準を本の厚みにすると20cmにも及びます。量が多く読解に時間がかかりますし、専門的な文章の読み込みが得意でないとなかなか大変です。その点、私はファーストキャリアや起業を通して、異なる文化圏や事業領域のルールを把握することに慣れています。自分の特性をうまく活かせるなと思い、保安基準の理解を率先して進めて行きました。完成車メーカーになる上で型式証明をクリアするためのルートを定め、開発の優先度づけやシナリオづくりをしていくのは面白かったですね。

入社後、戦略を形にし組織に浸透させた理由

ーー上記と並行して事業全体の戦略構築を推進されていました。徳地さんが入社される前後で戦略に対する組織全体の解像度がかなり高まったと思っているのですが、そもそもなぜそこに着目したのでしょうか?
 
私がインドで飲食店を経営していた時や事業責任者をしていた時に、戦略を解像度高く形にし、浸透させる存在の重要性を強く認識していました。さまざまなバックグラウンドを持つチームが一枚岩になるためには戦略に対する共通理解が大切で、またそれらを組織に近い場所から形にしていく人材の大切さを経験していたのです。
 
入社当時のTuringではアウトラインはあるものの、各マイルストーンにおけるクリティカルパスやストーリーの解像度は伸び余地がある状態でした。TuringはAI・ソフトウェア・ハードウェアのさまざまな階層において高度な戦略と技術が求められます。すでに各分野で国内トップクラスの人材が集まっているからこそ、ボードメンバーの代弁者のような存在がいた方が、よりTuringが良くなるなと感じたので戦略構築に着手したのです。
 
ーー過去の原体験から、戦略構築を実行されたのですね。入社してすぐに事業の解像度を高めるために実行したのはどんなことでしたか?
事業戦略の解像度を高めるために行ったのは、われわれのベンチマーク先であるTeslaの徹底理解です。彼らの歴史や戦略をあらゆる文献や動画から学んでいきました。自動車産業をソフトウェアの力でアップデートしていったTeslaの功績は素晴らしく、参考になる観点が非常に多かったですね。そこから多くを学び、経営陣や各リーダーとすり合わせをしていく中で今の事業戦略ができました。そこから毎月アップデートをかけ、組織全体に周知・浸透させています。
 

メインミッションは資金調達・事業計画・開発のアラインメント

ーー今、徳地さんはどんなミッションを担っているのでしょうか?
現在の私のメインミッションは、資金調達・事業計画・開発のアラインメントです。ChatGPTを筆頭としたLLM、中国EVメーカーの勃興などで市場環境は大きく変化しています。入社して何度かTuringの戦略も変更しましたが、マクロ環境の変化を無視せずその時々で戦略をアップデートすること、考え尽くすことを徹底しています。
 
ディープテックであるわれわれにとって、資金調達は重要イシューです。戦略の変更が資金獲得のストーリーに繋がる理由を明確にするべく、ファイナンスチームとも話して全体の整合性を担保しています。また、組織全体に方針共有がスムーズになされるようドキュメントの整理や会議体を通じた情報共有はかなり意識して行っています。

今後のTuringのプラン

ーー今後のTuringの事業戦略やプランについて教えてください。

独自の強みを構築していく

まず、この数年でわれわれが行うべきイシューは大きく2つ。型式証明のクリアと独自の強みの構築です。完成車メーカーになるのであれば、法規認証・保安基準の壁は絶対に越えなければなりません。ここを通過する過程で車体開発のノウハウやナレッジを蓄積していきます。
 
次にTuring独自の強みの構築についてですが、AI・IVIの領域で少なくともTeslaや中国EVメーカーに並ぶ水準にまで行かなければなりません。手前味噌ですがTuringには国内トップクラスのエンジニアたちが集まっています。Turing独自のAI・車載OS・IVIの構築を現在進めていますが、彼らと一緒なら独自の強みを持ったシステムは実現できるはずです。それほど開発のスピードには日々驚いています。

アライアンスの獲得と事業のスケール

Teslaはロータス、ベンツ、トヨタ、パナソニックなどさまざまな企業から資金調達やアライアンスを実行してきました。アライアンスした企業から技術を学び、独自の強みを構築していったのです。Turingでも同じようにアライアンス獲得は必須であり、サプライヤーさま含め多くの会社を仲間にしていくことが重要だと考えています。
 
すでに東京R&Dさまとのアライアンスを2023年3月1日に発表しました、このアライアンスを通して、自社開発のシャーシを使った走行テスト、および、型式取得までやっていきたいと考えております。

ゼロから国内で影響力ある車メーカーになるために

ーーLLMによって事業戦略・計画に変更があったと言っていましたが、彼らの存在をどう捉えていますか?
ChatGPTを代表とするLLM(Large Language Model)は世界に衝撃を与えました。彼らの本質は人間が扱う概念である哲学・宗教・経済といった概念すら理解し、人間に示唆を与えることができる点です。Turingの自動運転AI構築において重要なのは、人間と同じ認知・判断能力を獲得することだと考えています。われわれは画像からの情報をベースに判断能力の獲得に挑戦しているのですが、人間と同じ判断能力を獲得するという文脈において、LLMの力は非常に相性が良いと考えています。
 
われわれはAI・ソフト・ハードと多くのレイヤーで開発を行っています。そのため、LLMや計算機の処理能力の向上、新たなプラットフォームやテクノロジーの台頭など外部環境の変化をいち早く反応しなければなりません。また、事業戦略・開発戦略にそれらを反映させなければなりません。直近ではLLMの発展により、「仮にレスポンスが早く、画像認識可能なChatGPT-4が早期に市場に投入されたとしたら、われわれのコアバリュー自体を変えなければならない」というシナリオも想定しました。そのシナリオは今のところ実現しませんでしたが、常にアンテナを張り外部環境の変化に備えなければなりません。
 
逆に言えば、変化の早いAI・ソフトウェアのカルチャーやそのスピード感を反映した車作りを行うことができれば、質の高いユーザー体験を提供できると思っています。そんな開発をTuringでは行っていますし、それを楽しむ人材が集まっています。
 

求めるのは答えがないものを作ることに楽しさを感じる人

ーー翻って、Turingに求められるのはどんな人でしょうか?
完全自動運転ってそのための正攻法や最適なアプローチって誰も明確な答えを持っていません。また、21世紀にゼロから自動車メーカーを立ち上げたスタートアップも日本には存在しません。われわれは答えがないものを作り、ユーザーに届けていく仕事をしていくのです。人によってそれはタフであり、逆に面白くもあります。Turingに求めるのは後者で、AI・IVI・車両開発において最高レベルの体験設計・開発が求められるからこそ、そういった仕事を全力で楽しめる人と働きたいですね。
 
Turingの事業戦略は、AI・EV・米中の自動車産業というさまざまな要因で変化してしていきます。そのため、それらの戦略変更にうまく対応しつつ仕事を進めるためには、目的から逆算し技術を使いこなすスキル・スタンスが必要です。戦略に応じて求められることが変わっていくので、うまくアンラーニングしていける方だと心強いですね。われわれは「We Overtake Tesla」という大きなビジョンを掲げています。その人のキャリアにおいても今までにない大きな挑戦をする場がTuringであって欲しいと考えています。
 

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