山崎 彬美 /Akimi Yamazaki

 
総務省に技術系総合職として入省。情報通信産業の社会実装支援を経験し、ITエンジニアの人材創出が盛んな会津若松市におけるスマートシティー政策を推進。その後、国際共同研究開発の推進や官民ファンドの監督を行う。次世代に対して良い日本を築き、志を持ち外貨を稼げる事業に携わりたいと思いTuringにジョイン。
 

イノベーションを支える人材でありたかった

ーーTuringにおいて重要ミッションである補助金獲得、工場立ち上げ。そしてAI開発のための走行データ収集PJTの旗振りなど、さまざまな重要ミッションを担当しカタチにしている山崎さん。前職は総務省で多くのプロジェクトを推進されていたとお聞きました。そもそもなぜ公務員への道を選んだのでしょうか?

建築コンペの斬新なアイデアと社会実装

工学系の家族の影響や形あるものを作るのが好きだったことから漠然とその道を志し、大学では工学部で建築都市デザインを専攻しました。建築コンペなどで、革新性のある意匠やデザインの建造物を目にする機会が多くワクワクしていたのを覚えています。一方で、コンペティションで表彰されるような革新的な提案と現実世界の建築物・建造物の間には大きな隔たりがあり、文脈の異なる全くの別物として切り離されているようにも感じていました。その背景には、規制やルールの関係で現実社会において実装されないという現実がありました。
 
ですが、ある日大学の授業で、公園敷地と湖面がなだらかに接続する島根県松江市の岸公園という事例が紹介されました。これは治水上の観点からは難しい設計でありながら、美しさや使いやすさといった思想に共感した関係者らの不断の努力により実現したものだとの説明を受けました。新しいものを生み出すには優れた建築士だけでは達成できず、そのアイデアを柔軟に受け止め共感するサポーターの存在も重要なのだなと考えるようになったのです。思い返せば、これが制度の設計や運用を担う公務員になる道を考え始めたきっかけでした。
 

「適切なステップを踏めば大丈夫」という言葉で景色が変わる

ーーそんな背景で公務員になる道を志したのですね。その中で、ハードルが高いと言われている国家公務員第一種に合格されています。国家公務員第一種への道を目指された理由を伺いたいです。
 
大学3~4年生で所属したゼミが、東京大学を退官された國島正彦教授(当時)と国交省の出向者である関健太郎准教授(当時)による期間限定で設置されたものでした。国の事業を受託する傍らで、少数ながらゼミ生を受け入れたいという教授のご意向によるもので、私にとっては本当に幸運な巡り合わせでした。
 
彼らに私が公務員を目指していることを伝えた時に「国家公務員第一種を受けるといい。国一はハードルが高いと言われていますが、公務員試験はなりたい気持ちを測るようなものなので、まずは挑戦してみるといいですよ」と背中を押してくれました。
 
当時、国家公務員第一種に勝手なハードルの高さを感じており、地方公務員になろうと思っていた私に、「自分の能力に蓋をせず進んだ方がいい」「適切なステップを踏めば結果はついてくる」など背中を押してもらえる言葉を多くいただいたことを覚えています。

社会変革のサポーターたるべく総務省へ

ーー総務省へ入省され、どんなご経験をされてきましたか?また、さまざまなプロジェクトをご経験されてきた中で今の山崎さんを形づくっているものはなんでしょうか?
 
総務省は電波法や電気通信事業法、放送法などを所管する官庁であり、1-2年ごとの人事異動を経験しながら、学生時代から志していた広義のインフラ整備や制度設計・運用に多面的に携わることができました。
 
会津若松市でのスマートシティ政策や国際戦略局での海外展開企業支援、厚労省でのコロナ対策チームなど、さまざまな経験を積みました。その中で私の分岐点になっているものが大きく2つあります。

社会の流れを澱みなく進めるために

一つ目は新型コロナウイルス感染症の流行をキッカケに生まれた厚労省のコロナ対策チームでの経験です。当時、全国の医療機関に迅速にサージカルマスクを配布する必要がありました。緊急かつ重要な業務を正確に進めなければならない中で、外部問い合わせ、資料更新のためのデータ吸い上げ、議員問い合わせの対応など窓口をしたのです。
 
そのタスク自体は成長実感があると感じる人が多くないかもしれません。ですが、自身の仕事によってチームのメンバーが業務に集中することができることで、間接的に社会に貢献しているという実感がありました。社会や組織が澱みなく回るためには、直接的に業績などの主要KPIに寄与しないかもしれないけど全体にとって重要な仕事が多く存在します。そういった役回りを高い量・質で行うことの意義や価値に誇りを感じたのです。その経験は私のキャリア観の根幹を成しています。

主役の輝きが増せば、サポーター自体も輝いていける

二つ目の経験は、国際戦略局での経験です。日本のICT技術を用いたサービス・製品を海外に売り込むための環境づくりと、設立5年目となる官民ファンドの制度設計を見直すといったミッションを担いました。日本がグローバルで勝つために企業とタッグを組んで進めていくのですが、そこである種のもどかしさを感じたのです。
 
海外展開の主役はあくまで企業で、国はそのためにルール面でサポートをしていきます。サポートする側としてさまざまな制度やフォロー体制を考えるものの、日本企業がグローバルで勝っていくにはプレイヤー自身の意思や戦略が大切です。自身がどれだけサポートしたいと強く思っても、主役側にそれ以上の熱量がなければその思いを完全燃焼させることはできないのです。
 
そう思った時に、「自身がプレイヤー側として、後世に誇れるものを残していきたい」「50代・60代になったときに、後世の人たちに誇れる意思決定や仕事をしたい」と考えるようになりました。

“後世に誇れる日本”を残すために

ーーそんなミッションを担われたのですね。社会に貢献をしていた実感を持たれていた中で、充実感もあったと思います。その中で山崎さんは当時走行パートナーとしてTuringに関わることになりました。どんな経緯だったのでしょうか?

転職活動では答えが見つからず、思い切って休憩期間をつくった

国家公務員として猛烈に働いていた中でふと「自分の時間も大切にしたい」と思う時があり、プロジェクトがひと段落したら転職するなどして自分の時間をとろうと考えていました。転職活動でエージェントなどと話しをする中で、公務員としてのキャリアを踏まえるとコンサルや事業会社、スタートアップといった選択肢が見えてきました。
 
公務員からコンサルへと進むルートは、公務員がさまざまなプロジェクトをローテーションする働き方や、領域における知識と理解を早期に獲得することが求められるという点で似たものがありました。また、コンサル会社への転職では官公庁渉外というミッションを任されることが多いことから仕事内容がイメージしやすかったです。
 
一方で、「サポーターの立ち位置のままでいいのか。コンサルも事業会社などの側面支援をするという面では公務員と本質的には変わらないのではないか」という葛藤と、官公庁渉外という立ち位置であれば在籍時にもっとできたことがあるのではないかと思いました。そんな悩みが払拭しきれないまま次の環境に行くのではあれば思い切ってさまざまな環境を見てみようと考え、仕事を辞めておやすみ期間に入りました。

スタートアップとの予期せぬ出会い

そこから半年ほど、溜まっていた本を読んだり資格取得をしたりしました。おやすみ期間終盤は社会への接点が少ないからか、新しいことへの挑戦に今一つスイッチが入らず「このままではよくない」と感じたことを覚えています。そこから仕事を探していた中で、ある日Twitterで山本一成さんの走行ドライバー募集ツイートを発見します。千葉県に住んでいたことや、スタートアップを覗いてみたいという思いからDMを送ってみたのですが、そこで文化の違いに驚くことになったのです。
 
まず、山本さんとの面談のカジュアルさです。「山崎さん丁寧だったし、問題ないと思っているよ。スタートアップ楽しいよ!来ない?」と言われ、面接を終えた翌週にはTuringの一員になっていました。また、権限付与されたSlackやNotionなどの情報から会社の雰囲気を垣間見ることができ、性善説で組織が運用されている点やコミュニケーションが非常にフラットなことにも驚きました。

世界を本気で変えようとする姿勢にいつの間にか心を奪われていた

ーーそんな経緯でTuringに関わることになったのですね。そこから正社員になったキッカケはなんだったのでしょうか?
入社して1カ月ほど、アルバイトとして走行データ収集を行っていくことになるのですが、そこでTuringが本気で完成車メーカーを目指していることや、後世に誇れるような事業を創ろうとしていることを目の当たりにしました。最初はビッグマウス的な形で目標を掲げているのではないかと疑っていたのですが、事業がスピーディーに形になっていく様子を目の当たりにし、いつの間にか心を奪われていたのです。
 
「もしかしたら自分のスキルが活かせるかもしれない」「自分と似たスキルセット・経験の持ち主が自分より先にTuringにジョインしてしまうかもしれない」そう思うと居ても立っても居られず、代表の山本さんに職務経歴書を送り面談させてほしいと伝えていました。そこから体験入社期間を経て、正式に社員として入社することになったのです。
 

最強のなんでも屋を目指す旅が始まった

ーーそんな経緯で山崎さんは正社員になったのですね。今ではTuringでさまざまなミッションを担っていますが、どんな形で仕事を任されていったのでしょうか?

「あなたは何をしたいの?」という問い

最初はバックオフィスの事務職+αのミッションを担うという認識でした。その中で公務員で培った渉外やタスクマネジメントスキルをうまく使えればと思っていたのです。ですが、入社後に青木さん・小野さんと面談をしたことがキッカケで大きく変わりました。
 
「山崎さんから見た課題はなんだと思う?」「何ができそう?」「待たずにどんどん行っちゃっていいよ!」と言われのは衝撃的でしたね。まずは与えられたミッションを遂行していこうと考えていたのですが、そのスタンスではなく自分で組織の課題を考え、コトを進めていかねばと切り替えていきました。そこから「渉外や事業計画の策定・仕込みをやりたい」と伝え、自分からボールを拾っていくようになりました。

組織が機能する裏にはなんでも屋が存在している

ーー山崎さんは事業計画の策定やピッチ資料の作成、走行データ収集プロジェクトの管理や工場立ち上げのリーダーなど、どんなボールも拾い、高速でカタチにされているのが印象的です。自分はなんでも屋だとおっしゃっていますが、なんでも屋という立ち位置にこだわりを持っている理由はなぜなのでしょうか?
 
2023年1月に正社員として入社して少し経ちましたが、青木さんからさまざまなミッションを任せていただきました。事業開発、バックオフィスと職種を制限せずに動いています。
(※インタビュー当時は2022年2月です)
 
前述しましたが、私は自分でしかできない仕事というよりは、誰かがやらないといけない仕事に意義を感じるタイプの人間です。便利屋や裏方がいないと組織は成り立たないですし、そういった役回りに誇りを持っています。だからこそ守備範囲は広く、物事への解像度も上げていくことを意識しています。
 
どんな組織にもそういう存在がいると思いますが、逆に言えばそういった存在がどれだけうまく機能するかは組織全体のアウトプットに大きく影響を及ぼすはずです。だからこそ、落ちている仕事やボールへの嗅覚を磨くように意識しています。
 
この点において、公務員で1~2年で人事ローテーションがあったことが役立っています。謙虚に学び、短い時間でその領域において誰よりも詳しい人材になることが習慣化されていることが私の強みとなっています。「最高の素人たれ」という言葉を自身のモットーとしており、それが私のキャリアを支えてくれているのです。

完全自動運転が実現した先の世界を早く見たい

ーーそんなスタンスを山崎さんはお持ちだったのですね。山崎さんがキャリアや自己実現といった軸で、Turingを通して実現したいことはなんですか?

後世に誇れる会社・組織を作る

公務員時代は、技術系の総合職として勤めていました。それが私のキャリア基盤になっているのですが、いずれは開発をあらゆる角度でサポートする存在になることを目標にしています。現在私は工場立ち上げのプロジェクトを担当していますが、自動車業界という一大産業において積み上げられてきた歴史の長さとの自分の無知を日々痛感しています。Turingが作ろうとしている工場は比較的小規模な開発・製造拠点を兼ねるものですが、そこで行われる製造工程や消防・建築法規への理解、安全衛生管理の知識など、それでも考えるべきことは無数にあります。実際には社内外のプロフェッショナルを巻き込んで仕事をしていくとしても、最低限そのプロフェッショナルの方々と対話が成立する程度の深さのある知識を身に着けていきたいと考えています。また、Turingでは今後資金調達や補助金獲得が重要ミッションになっていきます。私が今まで国プロの制度設計や運用などを通して培ってきた経験を活かしていきたいですね。
 
後世に誇れるような会社・組織を作ることが私の目標なので、そのために必要なことは全てやっていこうと思っています。

完全自動運転実現は社会にとっては通過点でしかない

また、Turing全体を通して私が成したいのは、完全自動運転の是非にとどまらず、その次の話ができる時代を実現することです。完全自動運転が実現するという前提で国のビジョン・法制度はレベル4の達成を主眼としています。そこに対抗してレベル4や5という議論ではなく完全自動運転の実現の話をしているのがTuringです。
 
完全自動運転が実現した中で、それをどんな形で社会実装していくのか。すでに日本全体が超高齢社会に突入している中で、どうやって社会課題を解決していくのか。そんな議論を早く進めていきたいと思っています。
 
交通弱者ゆえに住む場所を変えなければならない。移動手段がない。といった悲しい話が起きない時代を作ること。それができた時に「後世が誇れる仕事ができた」と言えるのではないかと考えています。

最後に

完全自動運転と、その先の社会の実現にはまだまだ多くの事業・組織課題があります。公務員出身、何でも屋を志す私以外にも、多様なバックグラウンドを持った人材が必要です。「後世に誇れる仕事を一緒にしたい」「目標達成のための組織運営という価値観に共感する」そんな方がいたらぜひTuringにご応募ください。「スカウトを待つ」というボタンからの応募をお待ちしています。